地方移住や北海道移住に関する発信を見ていて、たまに少し気になることがあります。
それは、地方暮らしがきれいに語られすぎていることがある、という点です。
自然が近い。
人が温かい。
ゆったり暮らせる。
都会では見えなかった大事なものが見えてくる。
そうした言葉には、確かにその通りだと思う部分があります。
実際、地方には都市部にはない魅力がありますし、そうした魅力に救われる人がいるのも事実だと思います。
ただ、それだからといって、地方暮らしは良い面だけではありませんし、人を選ぶものでもあると感じています。
なぜなら、地方移住は誰にとっても心地よいものではないからです。
向いている人もいれば、向いていない人もいる。
魅力もあるけれど、負担もある。
その両方を書かないと、地方移住の話はどうしても薄くなると思っています。
この記事では、地方暮らしを美化しすぎる発信に、なぜ違和感があるのかを、地方移住の現実という視点から整理してみます。
地方移住の発信には、きれいごとが多すぎると感じることがある

地方移住の発信でよく見かけるのは、やはり魅力の部分です。
自然が近いこと。
人が温かいこと。
食べ物がおいしいこと。
空が広いこと。
子育てに向いていそうなこと。
ゆったり暮らせそうなこと。
こうした話は、もちろん間違いではありません。
地方暮らしのメリットとして、たしかにそういう面はあります。
ただ、それが繰り返されすぎると、地方移住がひとつの理想論のように見えてきます。
地方に行けば、気持ちよく暮らせる。
地方に行けば、人間らしい暮らしができる。
地方に行けば、都会で感じていた息苦しさから解放される。
でも、そこまで単純なら、地方移住で後悔する人はいないはずです。
実際には、移住後に戸惑う人もいます。
孤独を感じる人もいます。
車社会に疲れる人もいます。
人との距離感が合わない人もいます。
移動や買い物や冬の負担が重く感じる人もいます。
地方移住には魅力があります。
ただ、それを美しい言葉だけで語ると、かえって地方移住の現実が見えにくくなると思います。
地方暮らしには、合う人と合わない人がいるのが普通です

私は、地方移住の話をするときに、いちばん大事なのはここだと思っています。
地方暮らしには、合う人と合わない人がいます。
そして、それは当たり前のことです。
人混みより広い空間が好きな人。
海や山が近い生活を心地よいと感じる人。
空や季節の変化に気持ちが動く人。
多少不便でも、自然や静けさの方を優先したい人。
地域とのゆるいつながりに抵抗がない人。
こういう人には、地方暮らしはかなり合う可能性があります。
一方で、都市の便利さや店舗密度が安心につながる人、匿名性の高い暮らしが好きな人、車を前提にした生活を望まない人、寒さや雪が強い負担になる人には、地方暮らしは単純にしんどい場合もあります。
地方移住が良いか悪いかではなく、自分に合うか合わないか。
本来はそこを中心に考えた方が、ずっと現実的です。
地方移住を成功談だけで語ると、この前提が見えなくなります。
でも実際には、向き不向きを無視した移住はうまくいかないことも多いと思います。
そのことは、別の記事でも書きました。
[地方移住で合わない人がいるのは当然です]
また、東京から北海道に移住して実際に暮らしてみて、移住は「成功か失敗か」ではなく、どこまで自分に合うかで見た方がよいとも感じています。
[北海道移住は成功か失敗か|東京から移住して実際に暮らして感じたメリットとデメリット]
地方暮らしを美化しすぎると、生活の負担が見えなくなる
地方移住をきれいごとで語ることに違和感がある理由のひとつは、生活の負担が見えにくくなるからです。
たとえば地方では、車が前提になる地域が多いです。
買い物、通院、通勤、ちょっとした外出でも、車がないと難しいことがあります。
北海道のように冬のある地域では、そこに雪や路面状況まで加わります。
車を持つだけでなく、冬にどう使うかまで含めて生活になります。
また、買い物や病院や役所までの距離も、都市部とは感覚が違います。
東京でいう「近い」が、地方では近くないことがあります。
徒歩圏の概念もかなり違います。
地方暮らしの魅力を語るとき、こうしたことを「少し不便だけど慣れますよ」で片づけてしまう発信もあります。
でも、その不便さが毎日の負担になる人にとっては、そこはかなり大きい問題です。
観光なら見えないことでも、暮らしではすぐに効いてきて、不満として積み重なっていきます。
だから地方移住を語るなら、空の広さや自然の近さだけではなく、生活動線や移動負担や冬の条件まで含めて書いた方が誠実だと思います。
東京と北海道では、日常生活の感覚そのものがかなり違います。
そこを具体的に書いたのが、こちらの記事です。
[移住相談での注意点!東京と北海道の日常生活の違いから起きる感じ方の違い]
また、北海道は一括りでは語れません。
気温も雪も風も、地域によってかなり差があります。
その違いは、こちらの記事でも整理しています。
[北海道の気温が誤解される理由・これだけ違う北海道内の気温]
地方の人間関係も、美談だけでは語れません

地方移住の発信で、もうひとつきれいに語られやすいのが人間関係です。
地方は人が温かい。
助け合いがある。
顔が見える関係がある。
地域とのつながりが感じられる。
これも、たしかにそういう面はあります。
実際、地方ならではの安心感や支え合いがある場面はあります。
ただ、それだけではありません。
人との距離が近いことは、心地よい人にとっては魅力ですが、近すぎると感じる人には負担にもなります。
顔が見える関係は安心にもなりますが、匿名性の低さとしてしんどく感じる人もいます。
地域とのつながりも、自然に入れる人にはよくても、合わない人には窮屈さになります。
地方の人間関係は、美談だけで語れるほど単純ではありません。
だからこそ、「地方は人が温かいから大丈夫」とだけ言ってしまうのは危ういと思います。
それは地方を悪く言いたいのではなく、地方を誠実に語りたいからです。
田舎町での人とのつながりについては、以前こんなことも書きました。
[田舎町に住んでいると仕事関係以外の友人がつくりにくいのか?]
それでも地方の価値は、美化しなくても十分にあります
ここは誤解されたくないのですが、私は地方の価値を否定したいわけではありません。
むしろ逆で、地方の価値は、美化しなくても十分にあると思っています。
空の広さ。
海や山が日常の近くにあること。
季節の変化が生活の中に入ってくること。
移動の途中に景色があること。
人の密度が低いことで、より一層空気がおいしく感じること。
こうしたものは、地方暮らしの大きな魅力です。
北海道なら、その魅力はなおさらはっきりしています。
でも、その魅力を伝えるために、地方を理想郷のように描く必要はありません。
むしろ、負担や条件もきちんと書いた上で、それでもなお残る魅力を書いた方が、地方の価値は深く伝わると思います。
地方の価値は、不便さを我慢した先のご褒美ではありません。
自分に合った優先順位で暮らしたときに見えてくるものです。
だから私は、地方暮らしを美化しすぎるより、魅力と負担の両方を書いた方が、かえって地方の魅力は伝わると思っています。
北海道の中でも、岩内町で暮らしていて感じること
こうしたことは、私が北海道の岩内町で暮らす中でも感じています。
岩内町には、たしかに人を惹きつけるものがあります。
海と山が近く、空の変化が大きく、季節の表情が日常の中にはっきり入ってきます。
都市部ではただの移動時間だったものが、こちらでは景色を見る時間になることもあります。
私が毎日配信するインスタグラムの投稿に対して、「綺麗な景色」「岩内町大好き」というコメントが寄せられることがあります。
そういう反応を見ると、この町の風景や空気感には、やはり多くの人を惹きつける力があるのだと思います。
でもその一方で、暮らしの現実もあります。
車が前提になりやすいこと。
冬の移動を軽く考えられないこと。
店やサービスの密度が都市部とは違うこと。
人との距離感が、合う人と合わない人に分かれやすいこと。
私は、こうした現実があるから岩内町の価値が下がるとは思っていません。
むしろ、そういう条件があってもなお、この町の景色や空気感や暮らし方に意味を感じる人がいる。
そこに地方移住の本質があると思っています。
だから、岩内町に限らず地方移住を語るなら、
「いい町ですよ」
だけでは足りないと思うのです。
魅力と負担の両方を書いた上で、それでもこの暮らしに合う人がいる。
その書き方の方が、地方にも、読む人にも誠実だと思います。
岩内町での生活感や実体験に寄せた記事は、こちらにもあります。
[北海道の移住先として岩内町は住みやすいのか住みにくいのか]
もう少し全体的な視点で書いたものとして、
[北海道移住を田舎町の生活から語りたい]
もあります。
まとめ|地方移住の現実を語るなら、魅力と負担の両方を書いた方がよい
地方移住の発信には、どうしても良い面が目立ちやすいと思います。
自然が近い。
人が温かい。
空が広い。
ゆったり暮らせる。
それは間違いではありません。
でも、それだけでは地方暮らしの現実は見えてきません。
地方には魅力があります。
けれど、誰にでも合うわけではありません。
車、冬、移動、人間関係、地域差。
そうしたものが負担になる人もいます。
だからこそ、地方移住を語るなら、美化しすぎない方がよいと思います。
魅力だけを書くより、負担も条件も含めて書いた方が、むしろ誠実であり、地方に合う人にも合わない人にも親切です。
移住フェアで自治体の方が「雪なんて北海道はどこでもいっしょですよ」と説明しているのを見かけたことがあります。
でも、そんなことはありません。
全然違います。
雪の量も、降り方も、風も、暮らしやすさも、地域によってかなり差があります。
そういう違いを軽く扱ったまま移住を勧めれば、移住後に不満を持つ人が増えてしまいます。
それよりもむしろ、本来その町の環境を楽しんでくれる人が暮らす方が、本人にとっても町にとってもプラスになるはずです。
地方の価値は、きれいごとで飾らなくても消えません。
むしろ、美談だけで薄めない方が、本当の魅力は伝わります。
さらに、その魅力に本当に共感した人が集まっていく循環が生まれれば、町にとってもプラスになると思います。

コメント